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死の情景 (金色の川)
地に生えそろう凍った草草に足の皮膚をすり切られながら
彼は川の目の前にいた。
彼と川以外には何の物もなく、ただいつまでも続く荒野があった。
遠くに見える、地平線の端からは、やがて月が上がるのを予感させる群青の色が
黒銀の空を少しずつ染め上げていた。
ただ為す術もなく、途方に暮れながら彼は下の川を見た。
月の光を流したような金色の川であった。
時折その光の切れ端が川の水面より天にまるで泡立つかのように
フカリ・・・フカリと
彼の頬をかすめ
消えていった。
しばらく見つめていれば目の奥がチカチカいって
その痛みに瞼をしばたたかせれば
大粒の涙が彼の頬を伝うのであった。
やがて嗚咽が彼ののどを突き、
ただ自然と流れ出た涙は
彼の心の糧をはずし
いつしか彼はむせび泣きに泣いていた。
その間も川は流れ続け
浮いてはたゆたう金の泡を一つ、また一つと
彼の足下からはじけさせるのであった。
”これがむじょうというものか”
泣きながら彼は思い、またその己の考えにおされて
いっそう激しく泣くのであった。
彼の涙は光となって
その優しい金の水面に消えていった。
(川は全てを受け入れ
その全てを肯定していた)
(川を母のように 彼が感じたとき
やっとその涙が止まった)
(彼が無表情に川を見下ろすと
川もまた無表情に彼を映しかえした)
(そこで彼はやっと
ああ、僕は死んだのだなと心の底から思った)
... まえへ
... つぎへ
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彼は川の目の前にいた。
彼と川以外には何の物もなく、ただいつまでも続く荒野があった。
遠くに見える、地平線の端からは、やがて月が上がるのを予感させる群青の色が
黒銀の空を少しずつ染め上げていた。
ただ為す術もなく、途方に暮れながら彼は下の川を見た。
月の光を流したような金色の川であった。
時折その光の切れ端が川の水面より天にまるで泡立つかのように
フカリ・・・フカリと
彼の頬をかすめ
消えていった。
しばらく見つめていれば目の奥がチカチカいって
その痛みに瞼をしばたたかせれば
大粒の涙が彼の頬を伝うのであった。
やがて嗚咽が彼ののどを突き、
ただ自然と流れ出た涙は
彼の心の糧をはずし
いつしか彼はむせび泣きに泣いていた。
その間も川は流れ続け
浮いてはたゆたう金の泡を一つ、また一つと
彼の足下からはじけさせるのであった。
”これがむじょうというものか”
泣きながら彼は思い、またその己の考えにおされて
いっそう激しく泣くのであった。
彼の涙は光となって
その優しい金の水面に消えていった。
(川は全てを受け入れ
その全てを肯定していた)
(川を母のように 彼が感じたとき
やっとその涙が止まった)
(彼が無表情に川を見下ろすと
川もまた無表情に彼を映しかえした)
(そこで彼はやっと
ああ、僕は死んだのだなと心の底から思った)