彼は埴輪だった。
それは本当。

埴輪の彼にミミィは話し掛ける。
「あんたなんで茶色いのよ、ごつごつして冷たくて
まったく最悪よね」
埴輪の彼はミミィはミミリって名前にしたほうがいいとか思う。

木の葉のゆれる日にミミィは彼を叩く。
「ちっとも壊れやしない、まったくまいったものだよ、このでくの坊が」
埴輪の彼はだいだらぼっちを見てみたなと思う。

ある日ミミィは埴輪の彼を海に沈める。
「もう戻ってこないでよ、絶対よ」
隙間から波に浸食されながら、あさってってどっちの方向にあるんだろうと
埴輪の彼は考える。

ミミィは屋上から彼を落としてみる。
「やっぱり割れない、邪魔な埴輪」
鳥が飛んでいったのはなんでだろうとか思う。

ミミィはたまに足で彼を蹴っ飛ばす。
「痛い!もっとやわらかくなれないの!私の足が骨折するじゃない!」
どーどー鳥がなんで死んだのか、彼は考えている。

まっさらな月が昇って
その月が真っ白になっているとき
埴輪はそっと起き上がって、
乱れたミミィの毛布をかけなおす。
ミミィは少しみじろきして、あっちを向いてしまう。
ほつれ毛が微かにゆれて、
埴輪は少しどきどきする。
そしてゆっくりと、
ゆっくりと、
初めて考えるように、ミミィのことを考える。
例え世界が落っこちて
地獄の業火に焼かれても
ミミィの代わりは僕がするから、
彼女だけは助けてください。
神様に三回祈って、埴輪はミミィの横に眠る。
ベッドの羽毛がふわふわいって、
埴輪は少し恥ずかしくなる。
ミミィが寝ぼけながら埴輪を抱きしめる。
きつくきつくぎゅっとする。
埴輪はこの瞬間が好きで
そのために生きている。
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