てってちゃんを門の角で、フィールブルー虫、フィーは待っていた。
フィーはてってちゃんが好きだから、てってちゃんが門から出てきた時が一番嬉しい。
この世に天国の花が咲いたみたいに。
てってちゃんにてってちゃんの友達は気をつけてねっていう、
そしてフィーの頭を撫でなでしてくれる。
フィーはてってちゃんが誇らしくて嬉しくてぷるぷるする。
てってちゃんはなんとか騎士団の一員だ。
フィーのことをとても好きだっていつも言う。
てってちゃんはフィーにとって一番の宝物だ。
「あら見てよ」
てってちゃんを待っているフィーに、そんな声が飛び込んできた。
「フィールブルー虫よ、醜いわね」
フィーはびっくりして固まった。
僕?僕のことかしら?
「こんな処にいて。誰かの友獣かしら」
「ええーあんなの友獣にする人いるのー?」
「私のきんぴらみたいに綺麗な毛皮もないし、
色も灰色だし、本当に。なんの取り柄もないわよね」
フィーは固まったまま聞いていた。時が止まったみたいにちっとも動けなかった。
「フィー、お待たせ」
てってちゃんが出てきた。
フィーはうるうるした目でてってちゃんを見た。
「?
どうした?フィー、何か哀しいことがあったの?」
てってちゃんは優しくフィーを抱き上げて、ほっぺにちゅっとキスしてくれた。
もしかしたら、てってちゃんは僕を友獣にしているから、馬鹿にされるかも知れない。
もしかしたらもしかしたら、僕のせいでなんだかいやな目にあっているかも。
フィーはそう思ったら哀しくて哀しくてどうしようもなくなって
ぼろぼろ涙をこぼした。
てってちゃんは驚いて、背中をとんとんと叩いてくれた。
「フィー泣かないで、なんにも怖くないからね」
「フィーほら、飴をあげるから」
てってちゃんの友達が、レモン飴をフィーにくれた。
てってちゃんがむいて口の中にいれてくれた。
ころころ嘗めると、やっと涙が止まって、
フィーはどうしたらてってちゃんにふさわしいフィーに慣れるだろうと思案した。
てってちゃんは肩車でフィーと一緒に家に帰った。

「わぁ!!フィー!!」
てってちゃんが驚く。
フィーは酸っぱくなった自分の体を情けなく見た。
レモンとピピューで毛生え薬が作れるってTVでやっていたのだ。
フィーは目をきらきらさせてぷるぷる震えた。
頭の中には金色の毛をふさふさに生やしててってちゃんに撫で撫でされる自分がいた。
だから作ろうとしたのだ。
そしたらチョビット背が足りなくて、泡立てている途中でひっかぶってしまった。
自分が臭くてどうしようもなかった。

その夜はてってちゃんがお風呂に入れてくれた。
てってちゃんは落ち込まなくていいよ、と言ってくれた。
どうしてもてってちゃんが好きだと思った。
このままじゃてってちゃんとお似合いになれないと思って泣けてきた。
てってちゃんは泣き虫のフィーを、抱きしめて慰めてくれた。
「こんな日もあるよ、フィー」

世の中には染料という物があるらしいことを知った。
それは角の薬屋さんで売っているらしい。
フィーは川原で特別にきらきら光る石をコレクションしていたのだけど、
灰色から綺麗な色になる自分を思って、
取っても惜しかったけど、それで染料を買おうと思った。
てってちゃんはその石よりくすんだ石でよくそこで薬を買っていたから、
きっと買えると思った。
薬屋さんで石を三つ出してぽしぽしすると、おじさんは困ったように首を傾げた。
「なにかね、フィーちゃん、何かの遊びかい?」
フィーは首を振って体を染める仕草をしてみせた。
「???
ああ、分かった、これが欲しいんだろう」
フィーは期待にぷるぷる震えた。
「ほら、2つあげよう」
おじさんがくれたのは丸い小さな砂糖菓子のようなものだった。
フィーはぷるぷる震えて、ぴっちしとお辞儀をした。
とてもとても嬉しかった。これで綺麗な色になる。
おじさんは笑って頭を撫でてくれた。

道々ちゅぱちゅぱと嘗めると、それはサラサラと甘い味を残した。
水たまりを見つけるたびに覗いてみたけど、
体はずっと灰色のままだった。
とうとうそれがなくなってしまっても、体は灰色のままだった。
フィーはとても寂しくなって、
とてもさみしくなって、
うなだれて公園でブランコに座った。
いつもならとっても楽しいブランコが、きいきい音ばかりで涙が出そうになった。
雨上がりの公園には誰もいなかった。
とてもさみしかった。

「フィー、どうしたの?」
涙がじんわりにじんできたとき、
てってちゃんの友達がフィーを見つけて、フィーを撫でなでした。
フィーはうるうるした目で友達を見上げた。
「どうしたん?哀しい?」
フィーは灰色なの、と地面に棒で描いた。
てってちゃんの友達は、モンスター語が読めるのだ。
「灰色キライ?」
ぷるぷると首を振る。
てってちゃんが馬鹿にされる。
「そんなことないよ、どうして?」
ふさふさじゃないし、灰色だから。
「カキちゃん!!フィー!!」
話していたら、てってちゃんが走ってきた。
ぱあしゃんぱしゃんと水が跳ねる。
そしてフィーをぎゅーっと抱きしめた。
苦しくてぽしぽしした。
「フィー!夕方になったら戻ってこいって言ったでしょ!
獣に襲われたかもって、すごく心配したんだからな!!!」
フィーはぷるぷる震えててってちゃんにしがみついた。
てってちゃんの愛が嬉しくて、自分がふがいなかった。
「ねぇ、キキキ、フィーが灰色じゃなくなったらどうする?」
「え!?
びょ、病気!?」
「ちがうちがう」
「んー、フィーだったら何色でも可愛いよ」
「灰色でも可愛い?」
「なに言ってンだよ、一番それが可愛いんだから」
フィーはぷるぷる震えた。
「どうした、フィー寒い?」
「んーじゃーさ、ふさふさに毛が生えたらどうする?」
「それはもうフィーではないのでは………」
「今のが可愛い?」
「ったりまえじゃん、
このぷにっとした抱き心地がたまんないんだから。
なんだってそんなことばかり聞くの?」
「フィーがちょっと落ち込んでたよ、
おまえがフィーのせいで馬鹿にされるって」
「どーしてさ!!!」
てってちゃんが驚いてフィーをのぞき込んだ。
「みんなフィーをうらやましがることはあれど、
馬鹿にされることなんか1つもないよ、
フィーどうしてそんな風に思っちゃったの」
「誰かになんか言われたかな。
まぁどうせ嫉妬かねたみか」
「フィ〜」
てってちゃんがフィーをぎゅうぎゅう抱きしめてすりすり頬ずりした。
「馬鹿だなぁ、人の言うことなんか気にするなよ、
僕は今のフィーがこの世で一番、一番好きなんだから」
フィーは嬉しくて嬉しくてぷるぷる震えて、ほっぺたを赤らめた。
てってちゃんのほっぺにちゅっとキスをした。
フィーもてってちゃんが一番大好き。
「フィーかあい!!」
ぎゅっとされて、
フィーは嬉しかった。幸せだった。
この世で一番、天国みたいに。

てってちゃんのためなら僕はなんだってするんだ。
そう、思った。
NOTICE : no reproduction or republication without written permission.
Copyright © 2007 by Benjyamin.Kayo All Rights Reserved